深堀隆介の作品は、単なるアクリル樹脂の積層ではなく、その中に金魚の生命を宿す、深遠な美しさを持っています。彼の手によって描かれる金魚たちは、透明な世界の中で生き生きと泳ぎ、鑑賞者に独自の感動を与えます。このアートの背後には、深堀が金魚を描き続ける理由や作品に込めた深い想いが息づいています。
秋田県立美術館で開催されている「深堀隆介」でその作品に触れる事が出来た。※作品の一部に写真撮影可能エリアが設定されています、その他では撮影は禁止です。（以下の写真は撮影可能エリアの写真です）
アクリル樹脂に封じ込められた生命の息吹
深堀隆介は、その独自の技法で知られるアーティストであり、彼が描く金魚は、アクリル樹脂を何層にも重ねる「積層」技法によって、まるで生きているかのように立体的に表現されています。この技法は、絵の具やキャンバスだけでは再現できない透明感や奥行きを持ち、金魚たちが実際に水中を泳いでいるかのようなリアルさを生み出します。
彼の作品は、単に視覚的な美しさにとどまらず、観る者の内面に訴えかけるような力強さを持っています。深堀が表現する金魚は、鮮やかに色づいた鱗や優雅に動くヒレだけでなく、まるで一瞬の生命の輝きを切り取ったかのような存在感を放ちます。金魚たちの姿には、儚さと力強さが同居し、鑑賞者の心を静かに揺さぶります。
金魚を描き続ける理由：消えゆく命への畏敬
深堀が金魚を描くことに強く惹かれる背景には、幼少期からの金魚とのつながりが大きく影響しています。彼は、自らが飼っていた金魚の死を経験したとき、その儚さと美しさに深く心を動かされました。それ以来、彼にとって金魚は単なるペットではなく、生と死を象徴する存在となりました。
その後、彼は自らのアートを通じて、生命のはかなさや美しさを表現しようと試み、結果として金魚をモチーフとする作品にたどり着きました。アクリル樹脂という透明な素材を用いることで、金魚が持つ自然な動きを捉えつつ、その生命の儚さを永遠に封じ込めることができるのです。彼の作品には、生きるとは何か、死とは何なのかを、考えさせられる深堀の強い思いが反映されています。
透明な層の中に宿る「生」の物語
深堀の作品は、アクリル樹脂が固まるたびに、その中に新たな生命の層が積み重なります。これにより、彼の作品は単なる平面ではなく、時間や空間を感じさせる奥行きを持つのです。
金魚がまるでアクリルの層を泳ぎ抜けるかのような立体感は、見る角度や光の加減によって異なる表情を見せます。これは、まるで金魚が水中を自由に泳いでいるかのような感覚を与え、鑑賞者に新しい発見を促します。
深堀にとって、この積層されたアートは、ただの視覚的表現ではなく、命の営みそのものを象徴しています。彼は金魚の一瞬の動きを捉え、その瞬間を何度も積み重ねることで、命の連続性や儚さを表現しています。
それは、私たちが日常で見逃してしまう小さな瞬間の中にある美しさや感動を再発見するための手段でもあります。
まとめ
深堀隆介の金魚アートは、その技術的な巧みさだけでなく、作品に込められた彼自身の強い思いによって、鑑賞者に深い感動を与えます。アクリル樹脂に封じ込められた金魚たちは、彼が抱く「生命の尊さ」への敬意と、消えゆく瞬間の美しさを永遠に残したいという願いを象徴しています。
透明な層の中に生きる金魚の姿は、私たちに生命の本質を問いかけ、命の美しさに対する新たな視点を提供してくれます。
まだまだ作品の一部です、実際に見るのとは雲泥の差です、光の当たり具合・反射・色の厚みなど上からや横からなど多角的に見る事で更に作品にのめり込む事が出来ます。
